おはなし


東海の果てにある「もののけ」の国、
“度朔境”(どさくきょう)。
そこでは、天狐や水竜、鬼や河童や天狗はおろか、
亀の変化(へんげ)やら座敷童やら化け猫まで、のんびり仲良く暮らしています。
このはは、15歳なったばかりの天狐族の女の子。
ちょっぴり落ちこぼれ気味だけど、のんびり屋でマイペースな明るい子です。


春も間近なある日。
幼なじみの疾風から、このはに手紙が届きます。

―――もしよければ、“日野春村”に来ないか?

日野春村は、度朔境の端にある、とんでもなく田舎な所。
京(みやこ)から飛脚雲(ひきゃくうん)を使っても、三日はかかります。
でも、このはにはそんなことは関係ありません。
大好きな疾風からの招待。
このはは大喜びで、日野春村へと向かいます。


村でこのはを待っている、懐かしい出会いと新しい出会い。
優しい年上の幼なじみで、天狗族の疾風。
もう一人の幼なじみで、次期竜王の卯流(うりゅう)。
ちょっぴりクセのある、だけど気の良い村の住人たち。
それから、誰も知らない―――不思議な気配。


二人の幼なじみと、
にぎやかで優しく、ちょっぴり不思議なもののけ達に囲まれて、
このはの休日がはじまります。